ホスピタリティの対象は人だけだと思いがちですが、実は施設や物へのホスピタリティも大切なのです。
お客様が過ごす場所はピカピカなのに、看板や扉は埃だらけ…事務所の机も書類の山…。
この状況はスタッフが自分のお店への思い入れが薄れてしまった場合に起こる現象です。
ホスピタリティとは
サービスの原点…ホスピタリティとは
思いやり、心遣い、親切心、心からの歓待
わかりやすく ひと言で表現すると「人やモノを大切に想う気持ち」です。
ホスピタリティは、お客様だけに必要なのではなく、家族や友達、職場の仲間、施設や設備にも必要な事…。
人はもちろん…モノも大切にしましょう!
施設や物を大切にする心・気持ちはお客様にも伝わる
これはあるホテルでホスピタリティセミナーを担当させて頂いた時のことです。
そのホテルは設立から20年ほど経っていました。
使わなくなった椅子が階段の途中におかれていたり
何となく壁が汚れていたり…
そんな事を感じたので受講生に
「皆さんはこの施設をどのように想っていますか?」と訪ねたのです。
するとこんな声が返ってきました。
「オープンしたころはすごいなぁと想っていたんですけど
20年も経つと古いからダメですね。
やっぱり新しくないとお客様も泊まりに来てくれなくて…」
そこで私はこんな風に伝えました。
「じゃ、東京ディズニーランドはもう20年以上経つからだめですよね。」
すると受講生はハッと何かに気づいた表情になりました。
こういう意見はこちらのホテルだけではなく
多くの企業やお店で聴いています。
古いもの…時代を感じるものを大切にする文化は
もともと日本人がもっているもの…
古いからダメだというのは勝手な思い込みですし
言い訳のようにも感じてしまうのです。
そこで私は東京ディズニーランドが20年以上経った今でも
多くの人に愛されている理由とそのための努力を伝えました。
自分が働いている施設を大切に想う気持ちがあれば
1日の終わりにはピッカピカになるくらい綺麗に清掃します。
これまで多くのレストランのキッチンを見てきましたが
汚れがたまっても可笑しくない程フル稼働している
東京ディズニーランドのキッチン。
でも…私はそのキッチンより綺麗な場所を見たことがありません。
電球が切れたまま…とか
どこかが壊れたまま運営していることもありません。
壊れかけた場所を発見すればすぐに直しますし
ネジがゆるんでいるなど
自分達で直せることは
その施設を担当しているキャストが直しているからです。
その理由はたった1つ!
自分達の施設や設備を大切に想っているからです。
このセミナーが終わってから3ヶ月後
再びセミナーを担当することになり訪れました。
前回来た時に置かれていた壊れた椅子は無くなり
汚れていた壁は綺麗に清掃されていました。
まるでオープンしたばかりのホテルのように…
あのセミナーが終わった後
スタッフの皆さんで
ホテルの隅々まで点検し
綺麗に片付けて清掃をしたそうです。
お客様からは見えない場所も綺麗になっていました。
前回のセミナーでは
お客様が年々減少しているとのことでしたが
綺麗にした頃からお客様の人数が増えていました。
お客様から褒められる機会もかなり増えたそうです。
見えないから…ここは綺麗にしなくてもいいと想っていた頃の
その気持ちや感覚は客室にも現れていたのでしょう。
人間はそんなに器用に気持ちを切り替えられるはずないですから…
今は休業している施設も多いかも知れませんし
自宅にいる人も多いと想いますので
どこでもできる施設や物へのホスピタリティを紹介しましょう!
施設や物を大切にするための3つのホスピタリティ
ここでは施設や物を大切に理由と
大切にする方法をお伝えしたいと想います。
1.気にかける
欲しくて欲しくてやっと買えた~!って
想っているものは
どこに置くか…
汚れていないか…
壊れていないか…と
いつも気にかけているはず
ところが買ってから時間が経つと
その気持ちが無くなってしまい
そう言えば○○を買ったような…
なんて
いつの間にか想い出の一コマになってしまっていたり
埃がかぶっていても気にしなかったり
壊れていても直そうとしなかったり
そういう物があるな…と今想った人は
まずは気にかけてあげてください。
その上で使うかどうか
必要かどうかを考えて
もしも必要ないのなら
必要な人にあげるとか
処分することも大事と思うのです。
ただ置いて置くのはあまりにも可愛そう
大切にする…って
そういうことですよね。
施設も同じ
初めはいつも綺麗にしていたのに
いつの間にか埃がたまっても気にならない場所は
ありませんか?
忙しいから…という理由で
汚れたままになっている場所はありませんか?
まずは施設の隅々まで
全部点検してみてください。
掃除をするのはその後…
施設も物も
大切に想ってもらいたいはず…
まずは気にかける…ことが大切です。
2.ながら掃除
時間ができたら掃除しよう!と想っていると
時ばかりが過ぎてしまい
気づいたらものすごく汚れていて
商品の見栄えも悪くなってしまっていた…なんて
そんな経験はありませんか?
私はクリスタルパレスレストランで勤務していたとき
暇さえあればダスターでカウンターを拭いていました。
よし!掃除するぞーっと想う必要はなく
みんなでいつでも「綺麗にしよう」と
想っていれば…
そしてそれを皆で実行していれば
いつ見てもピカピカな状態になっているものです。
こういう指導を一般のお店でも行っていますが
埃がたまっているお店は必ず「時間がない」と言うのです。
特別な時間がなくても
お店を周りながら…
商品を並べながら
食器を片付けながら
施設をチェックしながらできる方法は
必ずあるはずです。
今の世の中、便利なグッズが山ほどあります。
大事なのは
意識すること
誰が…ではなく、みんなで行うことです。
3.壊れる前に修理
東京ディズニーランドが開業したばかりの頃は
電球が切れても、ネジが緩んでも
書類を作成して担当の部署にお願いしていました。
それを続けていたとき
クリスタルパレスレストランでこんな事が起こったのです。
夏が近づいたある暑い日に
突然製氷機(氷をつくる機器)が壊れてしまったのです。
氷がなければ出来ないことが沢山あります。
ゲストに提供する飲み物をつくることができません。
調理をするときも氷を使うことがあります。
サラダやデザートを冷やすための氷台をつくることもできません。
幸い東京ディズニーランドの場合は
近距離に他のレストランが沢山あるので
そこから運ぶだけでこのときは何とかなりましたが
近距離とは言え片道10分位の通路を
何度も何度も10kg以上ある氷を運びました。
機器が1つ使えないだけで
こんなに大変なことが起こるんだ…と実感しました。
後からキャストに確認したところ
最近ヘンな音がしていたんですよね…というのです。
その音を聞いたときに言ってくれたら
今日のような事は起こらなかったのに…と
一瞬想いましたが
これも機器を大事に想っていれば
気づけたことなんですよね。
それ以来私は機器の音、使用した時の感覚を
大事にするようになりました。
それと
ネジをしめるくらいなら
私たちで出来るので
必要最低限の工具を買ってもらいました。
壊れてから直すのでは
お客様に迷惑をかけてしまう…
だからその前に気づくことが大切!
これも施設や物を大事に想う気持ち…
ホスピタリティなのです。
最後に
ホスピタリティの対象は人だけではなく…施設や物に対しても大切。
私は担当じゃない…と思わずに
みんなが「大切にしよう!」と想っていれば
いつも綺麗な状態を維持できますし
何年経っても感動を提供できる場所のままでいられます。
コロナウィルス感染の影響で
自宅で仕事をすることが増え
WEBミーティングの回数が増えてきました。
その影響で自宅が綺麗になったという人が
いるかも知れませんね。
きっと部屋も家具も
みんな喜んでいると思います。